RESEARCH
本研究室では人工的に構築される電磁材料メタマテリアル、メタサーフェスに関する基礎・応用研究に取り組みます。とりわけ、自然界に存在する材料の限界や制限に着目して、それを超える新たな特性を創出します。また、その特性を応用したデバイス開発にも取り組みます。
波形選択性
一般的に自然界に存在する材料の特性は周波数とともに大きく変化されるものと認識されてきた。これを別の視点から言い換えると、周波数が固定された場合の各材料の振る舞いは常に一定と考えられてきた。ここで、ダイオードなどの回路素子を統合したメタマテリアルはたとえ同一周波数でも「波形」(パルス幅)に応じて入射波を選択的に制御することに成功した。この波形選択性は電磁波の従来概念に新たな自由度を与えると期待されている。
TLM法(Transmission-Line-Modelling法)
TLM法(Transmission-Line-Modelling法)は電磁界解析手法の一つとして知られている。TLM法はキャパシタ、コンデンサなどの伝送線路から構成されるTLMユニットセルによって解析空間を離散化し、時間領域において解析・評価する手法となる。TLMユニットセルにダイオードなどの非線形回路素子を直接接続することで、メタサーフェスの非線形かつ過渡的な応答も可視化することが可能となる。
- Reference 1: H Wakatsuchi et al., IEEE AWPL, 2015. Link
ノンフォスター回路
キャパシタおよびインダクタの回路定数(それぞれC、L)は正の値を取ることが一般的である。これに対して非線形回路素子から構成されるノンフォスター回路は負のリアクタンス成分(-C、-L)を作り出すことができる。世の中に存在する電磁材料およびデバイスは広くリアクタンス成分を含み、強い周波数依存性を有しているものの、ノンフォスター回路を導入することで正のリアクタンス成分を打ち消すことになり、既存の理論限界を超越した動作帯域幅を実現することができる。
- Reference 1: T Nakasha et al., PIERS, 2018.
デジタルノイズの吸収
0または1の二値から構成されるデジタル信号の電波波形は、矩形波(または台形波)となることから基本周波数に加え、無視できない高調波成分を含んでいる。このため、正弦波波形など、限られた周波数帯域で電磁ノイズを吸収する従来型電波吸収体は、その吸収性能に限界が存在する。そこで、高調波成分を従来のように効率的に吸収可能な基本周波数へと変換できる波形変換回路(アナログ積分回路)をメタサーフェス内に融合させることで、既存の吸収限界を超えてデジタルノイズを抑制できるようになる。
- Reference 1: R. Aihara and H. Wakatsuchi, Sci. Rep. (accepted). Preprint